
い、家族の声を静かに聞くようにしました。そうしますと、いままで自分だけが努力していると思っていましたが、主人がどれだけ大きな心で見守ってくれていたかも、母の孫を思う愛情も、そして長男は、私が長女につきっきりだった生活の中で、どんなにか寂しさを我慢していたかも、ひしひしと感じられるようになったのです。
私が心に平常心をもてるようになってくるにつれて、家庭が明るくなり、長女もうるさいほど、話をする子供へとかわってくれました。
お陰さまで長女は四年前にクリーニングの白洋舎に入れて頂き、一日も休むことなく勤務しております。熱があるから今日は休んだらと言っても、「私が行かないと会社が困るのよ」と、けなげなことを一言って出かけます。長女が頑張っている姿を見て、こんな幸福はないと思えるのです。
この春、お陰さまで長男が結婚しました。小さいころより、長女を可愛がってくれた長男でした。長女もそれをよく知っていて、長男が名古屋の大学で寮生活をしていた四年間、給料をいただくと毎月、貧乏学生だった長男に小遣いを送っておりました。
長女が耳が聞こえないことも理解してくれ、よき姉になりたいと結婚を決意してくれた友子さん、結婚するならこの人以外にないと、結婚を決めてくれたことに心より感謝します。
四月四日、横浜のホテルで式を挙げました。披露宴も終わろうとしたころ、進行表にはなかったことですが。司会の方が、「二人の結婚のきっかけとなった仁君の妹の亜希子さんに挨拶をして頂きます」と、マイクが回ってきました。私は一瞬、こういう席で、長女に挨拶をさせて
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